眠っていた夏布

一昨年だったか。

母から不意に生地を渡され、「夏用のワンピースを作って」と言われたのは。

さらりと作れるほど匠ではないし、そもそもどういうデザインがいいかなどまったくもって聞いていなかった。

さらに追加の無茶振りとして、既製品のワンピースをおもむろにクローゼットから取り出して、

「これと似たようなデザインでいいから!」

ものすごく……すごいことをおっしゃる。

 

そのワンピースは、立体裁断だけれど平面で、スカートにはタックが前後に4つずつ。

半袖には短いカフスがついていて、共布で腰リボン。 

細身じゃなく、かといって太くも見えないシルエット。

使われていた布が紺地だったのもあり、すっきり見える。

 

これを真似しろと……??

採寸して型紙を起こすやりかたをやっとわかってきたかどうかという当時の私の腕では、難易度が高過ぎました。

 

「やってやろうじゃないの」

……と一度はチャレンジしてみました。

 

型紙の原型をつくり、そこからゆとりを加えて立体裁断になるようにカット。

スカートにタックを寄せて、試作布に落としていざ仮縫い。

 

ここで躓きました。

見頃とスカートの長さが合わない。

しかもこれだと体にフィットしすぎて、体系がもろにでてしまう。

やはり、パターンの講義を受けるべきではないか。

独学でこれは難しすぎる。

そう考えた上で母に伝え、預かった布はストックスペースに眠ることになりました。

 


先日手に入れてきたワンピースの本。

ぱっと見、母くらいの年代の方でも着れそうなデザインが豊富だったので、試しに本を渡してみました。

「もし気に入ったデザインがあれば、あの夏布で作ってみる。」

 

その数時間後、このデザインならと選んでいただきました。

ただ、袖がついていなくて、一番見せたくない腕部分が出てしまうので、ここを調整できれば……との注文付き。

 

これくらいだったらできそう。

 

型紙をハトロン紙に写し、肩線を合わせてアームホールを別の紙に写す。

肩の合わせたところからまっすぐ下に線を下ろし、好きな大きさで止める。

あとは袖口を引いて、縫い代をつけて完成。

 

ちゃんとできた。

 

布のストックスペースからあの夏布を引っ張り出し、製作開始。

本体の見頃を縫い合わせて、袖だけ試作布で制作。

仮止めしてバランスを見る。

……少しギャザー寄りすぎ。

余分なくしてシンプルに。

少しだけ肩のところにいせこみ(少しきつめに入ってしまいましたが許容範囲)。

完成したのがこちらのワンピース。

背中の開きも、5cmほど長くしています。

ふんわり軽く、優しい肌触り。

歩くと風がスカートを持ち上げてくれて、歩き方がとても軽やか。

全体的にゆとりがたっぷりあって、体系はまず気にならない。

 

母に届けると、るんるんと少女のように喜んでいました。

 

いいプレゼントになったかな。

とても待たせてごめんね。

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